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2012年6月27日水曜日

ALMA望遠鏡 – 最初の科学的成果

ALMA(Atacama Large Millimeer/sabmillimeter Array)望遠鏡の最初の科学的成果がリリースされました。 フォーマルハウトを取り囲むリング状の塵の詳細をこれまでに無い精度で明らかにしており、賞賛に値する見事な画像です。 最終的には66台のアンテナを有することとなるALMAですが、今回の観測には15台が使用されています。 わずか15台のアンテナによる観測でしたが、「ハッブル宇宙望遠鏡が与えた衝撃に匹敵するほどの画像を目撃している」と、フォーマルハウトの研究にハッブル望遠鏡を使用した経験のあるPaul Kalas(カリフォルニア大学バークレイ校)は言います。 円盤の縁が鮮明であるのは、フォーマルハウトが二つの小さな惑星を持っており、それらによって巨大なリングの形に整えられたためと考えられています。 66台のアンテナすべてが稼働した際には、ALMAはこれまでで最も強力なミリ波サブミリ波の観測装置になります。

  • 'Projects Make Headway on Ground and in Space' Sky and Telescope誌, 2012年7月

この4月にプレスリリースされたALMA望遠鏡による発見です。

国立天文台によるプレスリリース

今回は15台での観測でしたが、現在も着々と建設が進んでおり、最終的には66台のアンテナ群を要する干渉計方式の望遠鏡となります。 アンテナの内訳は、12m × 50 + 12m × 4 + 7m × 12と口径が異なるため性能が単純に台数に比例するわけではありませんが、ざっと見積もると、光を集める能力(集光力)は約4倍、画像を作成する能力は20倍(!)、細かいものを見る能力(分解能)も数十倍になる予定です。 日米欧の国際協力プロジェクトで、日本は干渉計が苦手とするなだらかに広がった成分をもらさずとらえる能力を付加するACA(Atacama Compact Array)を中心となって開発しています。

ALMAプロジェクトには個人的に知り合いが多く、先日、銀河の画像を見せていただきました。 ACAを結合した観測結果で、渦巻き銀河の構造を細部にまで捉えており、速度構造まで明らかにしていました。

今後、さらに衝撃的な画像が量産されることでしょう。

2012年6月9日土曜日

Ia型超新星爆発の起源

近年の盛んな研究により、Ia型超新星爆発の起源に関する議論が熱を帯びてきています。

光度が一定で明るいIa型超新星は、宇宙の起源を探れるほど遠方までの距離を赤方偏移とは独立に測ることができる指標として極めて重要な天体です。 1998年、宇宙がある一定の加速度で膨張しているという発見に寄与したことで一役注目されるようになりました。 しかし、その爆発の起源に関しては謎に包まれたままです。 超新星爆発が少なくとも一つの白色矮星の自己崩壊によって引き起こされるという点では、研究者の見解は一致しています。 しかしながら、白色矮星を熱核爆弾に変える具体的なプロセスに関しては、四十有余年に渡って議論が続いており決着をみていません。

有力な説として、白色矮星は通常の恒星と近接連星を成しており、この伴星からガスが供給され爆発が起こるという説が提唱されています。 供給されたガスによって、白色矮星の質量がチャンドラーセカール限界(Chandrasekhar limit)を超えると、白色矮星は潰れ始めます(重力崩壊)。 チャンドラーセカール限界とは電子の縮退圧が星の重さを支えきれる最大質量で、太陽質量の1.38倍に相当します。 この収縮によって核融合反応の暴走が始まり、瞬く間に星全体に伝搬し完全に破壊されるというものです。

一方、近年支持を得ているのが、白色矮星同士の近接連星が最終的に合体し爆発を起こすという説です。 この説でもチャンドラーセカール限界を超えることが超新星爆発の引き金となると考えられています。

Carlos Badenes(ピッツバーグ大学)とDan Maoz(テルアビブ大学、イスラエル)は、この白色矮星連星説によって実際の超新星爆発の頻度が説明できるか否かを確認するため、Sloan Digital Sky Surveyのデータを用いて、銀河系内の4000個の白色矮星に対して調査を行いました。 その結果、15個の白色矮星に極端なドップラー効果の特徴が見られ、見えない伴星の周りを毎秒250km以上のスピードで回転していることが明らかになりました。 これらは互いに高速で廻る白色矮星の近接連星である可能性が高く、最終的に合体する運命にあると考えられています。

BadenesとMaoz両氏は連星の合体頻度を百年に一個と推定しました。これは天の川型銀河でのIa型超新星爆発の頻度とほぼ一致します。 この一致は白色矮星の合体がIa型超新星を起こすことを証明するものではありませんが、発生頻度としては十分であることを示しています。

他にもこの白色矮星連星説を支持する研究結果が報告されています。 スイフト(Swift)衛星による観測によって、Ia型超新星爆発からは進化の進んだ星や大質量星の伴星が存在している場合に期待されるX線や紫外線が検出されないことが明らかになっています。 このことは、より小さな恒星か白色矮星などの矮星がIa型超新星の元となる白色矮星の伴星である可能性が高いことを示しています。

  • 'New Fuel for Supernova Debate' Sky and Telescope誌, 2012年6月